第46章 貴方達となら、また
First Sound Entertainment. 略してFSE.
それが、MAKAの手から私が選んだ会社らしい。
今まさに、その小さな貸し事務所の前に立っていた。
そう。私はここで、ミクと、ミクの歌に出逢うのだ。
「君のことは、MAKAちゃんから聞いとるよ」
その人の良さそうな社長は、私を見上げて言った。
聞いているとは、私がLioだという事と 病気のせいで夢を失った事だろうか。
『よろしくお願いします』
「君は、色んな面で優秀らしいね。セルフプロデュースもしていたんだろう?」
『はい、まぁ』
「そういう事なら、中崎くんに ぜひ任せたい子がいるんだけど。アイドル志望の子でね」
社長のデスクを、ぼんやりと眺めながら考える。
私は、どうしてここに立っているのだろう。自分が歌えなくなってすぐ、他人のアイドル道をプロデュース?そんな馬鹿な話があるだろうか。
そのアイドルが華々しくデビューする様を、私は指を咥えて見るのか?
というか、どうしてまだ私は、音楽と関わる気でいるのだろう。
とっとと音楽から離れてしまえばいいのに。
そう、馬鹿な私に心の中で悪態を吐いた。
『社長…すみませんが、私にプロデュース業は ちょっと難しいかもしれません』
無表情で呟いた私を、社長は少しの間見つめた。やがて、何かを理解したように頷いた。
「そうか。いや、大丈夫だ。
出来る事から、ゆっくり始めていけばいい。とりあえずは、マネージャー業辺りから始めてみるか」
『スケジュール管理や、営業といった内容なら。ご迷惑をおかけしますが、それでよろしくお願いします』
私が頭を下げると、すぐに社長は部屋に彼女を呼んだ。
「じゃあ早速、君に付いてもらう子を紹介しよう。
ミク、ミク!入って来なさい。新しいマネージャーが決まったよ」