第46章 貴方達となら、また
それから、半年が経った。
私はなんとか生きていた。今日もゲームだけがお友達。スルメを齧りながらパソコンと向かい合っていた。
そして今日は、半年ぶりにまたMAKAが家へとやって来ている。今度は玄関から入って来た彼女が、何やら憤っている。
「イカ臭い!あんた何ゲームばっかりしてるのよ!」
『売れっ子ダンサーが、イカ臭いとか言わない方がいいんじゃないんですか』
「あのね…虚ろな眼して働きもせず、そんな人殺すゲームばっかり四六時中やってるの、死んでるのと変わらないから。
大体あんた、お金あるの?」
『今まで真面目にバイトして来たので、失業保険がしっかり下ります』
私が3キルを決めたところで、彼女はかぶりを振った。
「駄目よ。働きなさい。このさい、ファミレスでも事務でも工場の流れ作業でも、何だっていい。
あなたこのままだと、本当に駄目になるわ」
『…半年前は 生きていてくれるだけで良い。みたいなこと言ってたのに。随分と欲張りになりましたね』
「ヤバイ、本格的に人格が歪み始めてる…!」
MAKAは私の言動を見て、もう一刻の猶予も残されていないと感じたらしい。
数枚の名刺を、まるでトランプゲームのババ抜きの要領で、手に持って広げた。
「自分で、働きたいところを選びなさい。この中ならどこだって、私が紹介してあげられるから。
えっとね、私のオススメはねぇ…
大きい事務所ではないものの、人材を大切に育てるのがモットーの小鳥遊プロ。あと、ちょっとやり方はハードだけど、ゴージャスで実力のあるアイドルを多数輩出してる八乙女プロ辺りがー
って、ちょっと!」
私は名刺の字面を一切見る事なく、彼女の手中でズラリと並んだ1枚を引いた。
「もうちょっと真剣に選びなさいよ。あなたがこれから勤める会社なのに。そんなに適当に決めちゃって、もう」
『べつに、どこだって良いんですよ。どこだって』
たとえ、雑に選んだこの会社が “ ババ ” であったとしても。