第46章 貴方達となら、また
彼女は、強い瞳で私を見つめた。
この目は、今の私には眩しすぎる。
そう思い、私は彼女から顔を背けようとした。しかし それを許すまいと、MAKAは私の顔面を両手で掴み、自分の方へ直した。
「駄目。生きて」
短い言葉の中に、全てが詰まっていた。彼女の瞳孔に、強い生命の光が宿っている。
「歌えなくなっても。喉が潰れても。眼が見えなくなっても、手足がもげても!絶対に生きて!」
『…そんな、無茶苦茶な』
「だって私は、あなたがどんなふうになったって…あなたが好きよ。死ぬなんて、認めないから」
それがどれほど、私にとって酷なことを言っているのか。彼女には分かっているのだろうか。
分かっているはずだ。MAKAは、知っているから。
私がもはや、歌う為に生きているような人間だということを。
理解もしているはずだ。そんな私が、アイドルになるという夢を絶たれた苦しみも。
しかし、それでも彼女は…
私に、生きて欲しいと言った。
『……善処します』
「あっはは。何よそれ、馬鹿ねぇ。そこは普通に “ はい ” でいいのよ。
でも、ありがとう。
あなたが今日も生きてくれてる。その事実だけで、私は明日からまた頑張れるわ。
だから、私の為でもいい。下らない理由に縋ってでも、明日を生きていてね」
そして彼女は、翌日にはロスへと再び戻っていった。本当に私の顔を見る為だけの理由で、日本に帰って来たのだろう。
なんとなく生気を取り戻した私が、まず起こした行動。それは、芸能事務所各社へ向けた謝罪文の作成だった。
資料をくれた会社全てに、同じ文面をファックスした。
喉の病気には触れず、メジャーデビューをしない意向、そして謝罪の文言。
本来ならば、直接謝りに出向くべきなのだろう。しかし、今の私に出来る精一杯が、ここ止まりだった。