第46章 貴方達となら、また
ピンポーン
インターホンが鳴ったのは、それから さらに数日が経ったある日だ。
ピンポーーン
ピンポーーン
居留守を使うこちらの気持ちなど知った事かと、だめ押しでさらに2回押された。
ピンポーーン
ピンポーーン
ピンポーーン
これは恐らく、扉を開けるまで続くのだろう。仕方なく、椅子と同化しそうになっていた腰を持ち上げる。
しかし、すぐに私の視界は一面 壁でいっぱいになる。
違う。これは壁じゃなくて床だ。
一瞬遅れて、自分が転んだ事に気が付いた。そして、意識が遠のいていくのを感じた。
あぁ、私は死ぬんだな。なんて 半分死んだ頭で考えた。
でも別に、それならそれで構わないと思った。
Lioはもう、死んだのだから。
『…でも、…扉の向こうにいるの は、誰 だったんだろ』
死を受け入れた直後、そんな事を考えた。
インターホンを鳴らしたのが、誰だったなら私は嬉しかっただろう。
初めて出来た彼氏、万理?
可愛い約束を掲げてくれた、孤児院の少年?
その後に、顔が浮かんだのは まさかの人物。
『あ、れ…。私、なんでこんなときに、あんな
“ 顔だけ男 ” の ことなんか…思い出してるんだろ』
私が死の間際、最後に思い浮かべた人間は…大嫌いなはずの八乙女楽だという事態。
意味が分からなくて、こんな時なのに唇の端は吊り上がった。