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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第46章 貴方達となら、また




どうして、私だったんだろう?
そもそも、これは現実なのか?
あぁ、これからどうしよう?
歌えないなら、これからも何もないか。
もう全部、どうでもいいや。


この思考ループ。もう何度繰り返した事だろう。

気が付いたら、部屋にへたり込んでから2日が経っていた。さすがに生命維持に支障を来たらしたようで、体が悲鳴を上げた。

蛇口から直接、水道水を飲む。すると喉は、まるで渇きを思い出したように ひたすら水分を求めた。


まともに歌う事さえ出来なくなってしまった、ぶっ壊れた喉のくせに。一丁前に喉は乾くのか。なんて考えて、嘲笑した。

そして 急激な水分摂取に驚いた胃が、水を拒絶した。飲んで吐いて、飲んで吐いてを数回経た。


寝てしまいたかった。起きていたら、また最低な現実と向き合わなければならないから。
しかし、横になっても寝ることは出来なかった。

仕方がないから、気を紛らわせる事を探す。何かに没頭していないと、変な気を起こしてしまいそうだったから。

何気なく、パソコンのスイッチを入れる。人工的な明かりが目に痛かった。久しぶりに、光を見た気がした。


無料ゲームが並んでいる欄の、1番上にあった物をダウンロード。


『……』
(プレイヤー名…)


その欄に “ Lio ” と打ち込んだ。
私はまだ、この名前に未練があるのだろうか。自ら捨てざるを得なくなった、この名前に。

そこからは、ただひたすらにプレイし続けた。
銃機器や特殊能力を使って、自チーム以外のプレイヤーを抹殺するゲームだったが。べつに内容は何でも良かった。
ただ、それをしている間だけは、苦しい事を忘れさせてくれた。


水道水と、ゲームに生かされる日々。そんな生活が続いて、1週間ほど経過した。
私はゲーム内ランキングの1位、チャンピオンに君臨していた。

多くのプレイヤーから羨望の眼差しを向けられ、フレンド申請が山のように寄せられた。


『…こんな、私を、求めてくれる人が、ここにはいるんだなぁ。

でも、馬鹿みたい 』


1週間ぶりに、自分の声を聞いた。
そんな乾いた 生気のない声を聞きながら、フレンド申請の全てに 拒否というボタンを押すことで答えた。

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