第46章 貴方達となら、また
「いや、素晴らしい!!素晴らしかったよ!」
「ぜひうちの事務所に!あ、これ名刺ね!」
「あっあの、俺は芸能事務所のもんちゃうねんけど、あんたの歌に感動した!これからメジャーデビューするんか!?もしそうなんやったら、どこの事務所からするんか教えてんか!」
「それをこれから彼女に決めてもらうんだろう!」
『あ、あの皆さん、落ち着いて…』
インディーズデビューライブを終えるや否や、私の元には多くの芸能関係者の人間が詰め掛けた。ズケズケと袖の中へと入って来てしまう辺り、彼らの余裕の無さが窺える。それだけ、私をデビューさせてくれる気持ちが強いのは、ありがたい事だが。
『私も、ゆっくりお話をお伺いしたいです。ちょうど上がバーになっていますので、そちらへ、い 移動……』
「??
どうかされましたか?」
唐突に現れた、馴染みのない吃音。私は喉を押さえ、思考した。
今のは、何?
自分の意思に反して、声が 止まりかけた?
しかし、ただの気のせいだろうと首を振る。
『なんでもありません。行きましょう?』
私はまだ気付いていない。
すぐ後ろにまで近付いている、悲劇の幕開けに。
上階へと移動し、席に着くなり私は鞄の中を弄った。記憶が正しければ、たしかのど飴が2.3個入っていたはず。
数ヶ月前、人から貰って そのまま鞄に入れっぱなしだったのど飴。やはり残っていた。放置し過ぎていた為、包装紙に溶けた飴がねっちりと引っ付いていて取り出しにくい。
それくらい、普段は飴を食さない。
「喉のケアですか?さすがですね」
そんな的外れな男の言葉に、私は曖昧に頷いた。