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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第46章 貴方達となら、また




開演15分前。さきほどまで寂しい空間だったのが嘘のようで、客席は150人あまりの人間でごった返した。

私は、袖からほんの少し顔を覗かせる。
一体どんな人達が、今から私と楽しい時間を過ごしてくれるのだろうか。


『……』
(あの3人は、もしかして 同業の人かな?)


「なに。もしかして緊張してる?」

「ばっ、そんなんじゃねぇよ」

「あははっ。でも楽しみだね。どんな歌が聴けるんだろう。ワクワクするよ」


彼らは 3人が3人とも、色眼鏡に帽子というスタイル。身分を隠したいのが見え見えだった。しかし その顔に見覚えはないから、 メディアに出ている人達という訳ではなさそうだ。

そして明らかに、客席に多くいる芸能関係者の存在を気にしている様子。

もしかして、もうすぐデビューするアイドルだったりして。なんて、勝手な予想を立ててみた。



『……』
(あっちの人は、マスターの招待客さんかな?)


「あー、もしもし?俺や俺。

せやなぁ。なんや東京の人間は皆んな、やたら ゆっくりゆっくり歩いとるような気するわ。

おう、明日には そっち帰る予定やで。でもその前に、いつもの発掘や!
運良く、チケット手に入ってなぁ。これから聴くとこや。

そうそう、Longhi's。ここでライブするアーティストに、外れは少ないよってな。

なんや特にな、俺のカンが えらい反応しとんねん。俺は今日、運命のアーティストと出会える!言うてな!

明日帰ったら、速攻でZepp Osaka寄ったるから。土産話 楽しみしとれや。ほな、切るで」


今日、当日券の販売はしていない。ただ、マスターにチケットを数枚託していた。

マスターの手で、心から音楽が好きな人に渡して下さい。そうお願いして。

あの大阪訛りの男は、マスターから それを受け取ったのだろう。ならば彼は、きっと本気で音楽を愛する人間に違いない。

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