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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第45章 私のところに、帰って来て欲しい




春人を初めて見た時、懐かしさのようなものを感じた。でも、それだけでエリなんだと気付くには至らなかった。

しかし。私の好物であるメロンパンの存在や、私を応援してくれる様子を見て、徐々に確信に変わっていったのだ。
そこに、彼女が八乙女プロに勤めているという事実を加味して考えると、点と点は線になる。

私を取り巻く環境が、不自然に好転し始めたのも。こんな大舞台に突然呼んでもらえたのも。
全ては彼女が、私を想って八乙女事務所に働きかけてくれた結果なのだろうと。

でも、私だって いつまでもエリに 負んぶに抱っこされている訳にはいかない。


「九条さん」

「なに」

「 “ 春人さん ” にお伝え下さい。
私はもう、大丈夫だから と」


私が ギリギリ笑ってそう伝えると、彼は天使の微笑みで 分かった。と答える。そして、最後に こう残していった。


「じゃあね。
あと、キミの生歌。良かったよ」


そして彼は、スタジオから出て行ったのだった。


これでもう、次はいつエリに会えるのか分からない。さっき、独り立ち宣言したところだと言うのに もう寂しさで胸が押しつぶされそうだった。

必死に我慢しようとしたのだが、足が勝手に動いてしまう。

私は、天の背中を追って スタジオの外へと勢い良く飛び出した。


スタジオを出て、左。こちらの方向には、TRIGGERの楽屋がある。
きっとこっちに来ているに違いない。そう考え、スタッフや演者で賑わっている廊下を駆けた。

すると、すぐに4人の姿を捉える。その中の1人の背中を見た時、愛おしさがどうしても込み上げて来て。また目頭が熱くなる。


「ちょっと。普通 1人だけ置いて、先に帰る?」

「なんだ?TRIGGERのセンター様は、1人だと迷子になっちまって楽屋にも帰れないのか?」

「楽、後で正座ね」

「するかよ」

「あはは。ごめんね。なんだか深刻そうな話をしていたみたいだったから、邪魔しちゃ悪いと思って」

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