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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第45章 私のところに、帰って来て欲しい




「ミクちゃんはさ、これから歌うんだよね!?なに歌うの?」

「あっ、えっと “ 青い珊瑚 ” です」

「そう。これまた、言わずと知れた名曲だね」

「はい、そうなんです。
あの、実は私…」


ミクは、フレンドリーな2人の様子に心解されたのか、恐る恐る切り出した。


「こんなに大きなお仕事、初めてなんです。いつもは、小さなライブハウスで歌うか、メディアはラジオと地方局に少し出るくらいしか露出がなくて。
それなのに、尊敬する 女性ソロアイドルの方の名曲をカバーだなんて。
本当に、私なんかが この曲を歌っちゃっていいのかなって不安で…」


初めて聞く、ミクの心の声だった。
そうか。彼女は闇雲に緊張しているわけではなく、根底にはそういう思いがあったのか。

私は、それに気付いてあげられなかった。今はっきりと、思い知る。
私とミクは、もう本当に 遠いところに立っているのだと。


『……』

「プロデューサー」

『何ですか。天』

「寂しいの?」

『まぁ、少し』

「元気出して。キミには、ボク達がいるでしょ」

『そう でしたね。ありがとう。天』


一分の隙もないタイミングで、優しい言葉をかけてくれる天。そんな気遣いに感謝しつつ、再度 ミク達の会話に耳を寄せる。


「うーん、そっかぁ。それは確かに緊張もしちゃうかも。
ところでミクちゃんはさ、青い珊瑚は 好き?」

「大好きです!!セーコちゃんの事も、尊敬しています!」

「そう。じゃあ、大丈夫だ。その気持ちがあるならね」

「私、なんかで 良いんでしょうか」

「楽曲はね、愛してくれている人に歌われる事こそが 1番の幸せなんだよ。
だから君はただ、その大好きな歌を 楽しんで歌うだけでいい」

「…楽しんで、歌う だけでいい」


ミクは、千の言葉をしっかりと復唱した。

その隣で、百がいつもの台詞を口にしようとする。


「う〜〜んっ!さすがオレのユキ!もう超イケ」

『千、超イケメン…!』

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