第45章 私のところに、帰って来て欲しい
「あぁっ おかりん、それ返して!それは春人ちゃんからオレ達に託された、極秘任務なんだよぅ!」
「こんなキラキラ派手派手したうちわを振って!どの辺が極秘なんですか!」
「でもね、僕達がそれを手放してしまえば、TRIGGERの子達は誰の応援をしているか分からなくなってしまうんだ」僕のうちわに名前が書いてあるからね
「誰の応援でもいいです!ほら、エンディングトークまでの間に溜まってるアンケート書くって約束したじゃないですか。もう行きますよ!」
メガネのマネージャーに引っ張られていく2人を、ミクは見ていた。その心は、落ち着いてるわけもなく。
私のお手製のうちわも、少しの効果すら もたらしてくれなかったようだ。
「分かったよ。もう行くから、少しだけ待ってくれる?」
「全くもう。本当に、少しだけですからね」
「さっすが!優しいおかりん、大好き〜!」
凛人にひらひら手を振り、Re:valeの2人は ミクの前へと行った。
おそらくだがミクは、彼らほどの大スターと相対するのは初めてなのだろう。2人の眩いアイドルオーラに圧倒されている様子だ。1歩、2歩と後ずさる。
「ふふ、ほら。怖がらないで?僕らは怪しい者じゃない」
「そうそう!全然全く怪しくないよー?オレ達も君と同じ、アイドルだから!」
「も、ももも勿論、存じ上げてます!!」
「あは!オレ達の事知ってくれてるんだ?嬉しいな!やっぱりユキのイケメンさは、留まるところを知らないね、うんうん」
「そう?そんなふうに褒められたら照れちゃうな」
「きゃっ照れちゃってるユキも また素敵!!」
私は、ドキドキしながらミクと話す2人を見守る。
しかし私の心配を他所に、ミクの表情に変化が表れた。2人御家芸である夫婦漫才を前に、ガチガチだった彼女の顔には 笑顔が浮かんだのだ。