第45章 私のところに、帰って来て欲しい
「完全に、百さんと千さんを意識しちゃってますね」
「だな」
「わーぉ!オレ達ってそんなに有名人?!」
「やったね。モモ」
『喜ばないで下さい』
こうなったら、もうRe:valeの2人も作戦に巻き込むしかない。
私は、鞄の中から ある物を取り出す。それは昨日、徹夜して丁寧に作り上げたもの。
“ デコうちわ ” である。
『はい。これ、皆さんで、持って、下さい』
言いつつ私は、メンバー達にうちわを手渡して行く。
「…俺のうちわには、L 」
「ボクのはO」
「俺のはVだね」
『E!!』
「オレのはlovelyだって!あはっ、きゃわい〜」
「僕のにはミク。とあるね。大切な役割だ」
ピンクやブルーの、派手なデコレーションをされたうちわを、全員でフリフリする。
当然、周りは騒ついた。
「え、なんで?なんで無名のアイドルを、TRIGGERとRe:valeが推してんの!?」
「そういえば八乙女プロから、えらく気合の入った祝い花も来てたな」
「あのミクって子、そんなに凄いアイドルなのか?」
「分からんけど、歌を聴くのが楽しみになったよ」
隣にいたスタッフの会話を、聞き逃す私ではない。
Re:valeがここへ来てしまったのは、予想外だったが。悪い事ばかりではないようだ。
周りが勝手に、TRIGGERとRe:valeが ミクを特別視してると解釈してくれた。これは、今後 彼女が活動していく上で、良い働きをしてくれるだろう。
『……』
(TRIGGERやRe:valeに取り入りたいと思ってる人間は、山ほどいる。今後は彼らが、ミクを贔屓にしてくれるかも)
「ちょっと中崎さん!うちの看板アイドルに変な物を持たせないで下さいっ!」
『変な物!』ガン
突如として現れた、おかりんこと 岡崎凛人が、百と千からうちわを取り上げてしまう。