第45章 私のところに、帰って来て欲しい
彼女は、なんとか笑っていた。観客の声援に、必死に応えようとしていた。
『……』
(うぅ、健気だ…)
順番に撮られていくオープニングトーク。ミクの番も無事に終わり、いよいよ次は歌録り。
スタッフの指示により、4スタへと移動する。
私達4人も、ミクと社長の後ろはついて共に移動した。
「大丈夫かな。俺達、あまり役に立たなかったから」
「龍、ボクと楽の事を愚痴ってただけだったよね」
「いや。元はと言えば、お前が暴走したせいだろ」
「は?元はと言えば、楽がありえないアドバイスしたのが原因でしょ。人のせいにしないでくれる」
「あのな、2人とも…。いい加減にしないと、さすがに怒るぞ?」
「「ごめんなさい」」
『…はぁ』
私は、今日 何度目か分からない溜息を吐いた。そのまま4スタに入ると、すぐさま声を掛けられる。
「あれっ、春人ちゃん!その様子だと、例の件 上手くいってない感じ?」
『えぇ。ここまでTRIGGERメンバーが機能してくれないとは。予想外で』
「それは情けないね。もういっそ、僕らに鞍替えしちゃいなよ」
ここまで話しておいて今更だが、遅れてRe:valeが4スタにいる事に驚いた。
『なんで、お2人がここに居るんですか!』
「えぇっ酷い!オレ達さっき、ちゃんと言ったよ?!」
「また後でね、って」
『エンディングトークの収録の事だと思うでしょう普通!あぁもう、貴方達みたいな大物がこんな所にいたら、ミクが余計に萎縮するでしょう!』
なんとか2人をスタジオから追い出そうと試みる。そんな私の肩を、天が後ろから叩いた。
振り返ると、彼はミクの方を指差し言う。
「もう手遅れだと思う」
「〜〜〜っ」
(な、なんで私なんかの歌を聴きに、TRIGGERさんだけじゃなくてRe:valeさんまで!?え?意味が分からないっ!私、あの人達と特に面識なかったよね!?どういう事!?)
『……あぁ』
本当だ。もう、手遅れかもしれない。