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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第45章 私のところに、帰って来て欲しい




「プロデューサーさん…なんですね。いつも応援、ありがとうございます」

『い、いえ…』

「お花も凄く嬉しかったです!あんなに大きなの、貰ったの初めてで」

『いや、そんな。あれくらい、全然…
八乙女プロの経理周りは正直ザルなので、余裕で経費で落とせましたからお気になさらず』

「おーい。そのザル経理の会社立ち上げた人間の肉親がここにいるぞ」俺の前でしていい話かそれ


彼女にあまり顔を見られたくなかったので、終始 顔を俯けて話す。


「お名前…中崎さん、と仰るんですね…」

『……はい』


悲しげに目線を落としたミクは、どこかにエリを探しているようだった。
その後ろでは、社長が悲痛な顔で私達を見つめている。


「こいつの名前がどうかしたか?べつに、よくある名字だろ」

「楽、空気読みなよ」

「あっ!すみません、深い意味はないんです。ただ、私が凄くお世話になった方と お名前が同じだったので!つい、懐かしくて」


くるりと身を翻して、楽にそう説明をしたミク。

お世話になった。懐かしい。
そんな言葉をもらえる程、私は彼女に何かをしてやれた訳ではない。
全てを中途半端で投げ出して、私はいまここに立っているのだ。


「ミク、そろそろ…」

「はい社長。
では、TRIGGERの皆様。お忙しいところ、失礼致しました」


丁寧に頭を下げてから、ミクは社長と共に部屋を出る。

私はすぐ、後を追うように楽屋の扉を開けた。すると 廊下を歩き出したばかりの、2人の背中を見つける。


『あの!』

「…ミク、先に楽屋へ戻ってなさい」

「は、はい…」


彼はミクに、1人で楽屋へ帰るよう指示を出した。
それから私達は、すぐ側にあった給湯室で 身を隠すように話を始めた。


『…頭、上げてもらえませんか』


部屋へ入ったなり、土下座を始めた社長に私は言った。

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