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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第45章 私のところに、帰って来て欲しい




「あははは…。ほら、春人くん?彼女が挨拶に来てくれたよー。だからこっち来ようね」

『や、私はっ、』

「ファンなんだろ!ほら、握手でもしてもらえよ」んなところで壁になってないで

「あ、キミに花を贈ったのは、この人だから」


龍之介と楽の手で、強引に壁から剥がされる。そして、ずいっとミクの前へと押し出されてしまう。

ミクは、大きな瞳を輝かせて きょと。という表情で、こちらを見上げていた。
久しぶりに見る彼女が、可愛くて懐かして。このまま抱き締めてしまいたくて。私の胸と頭はもう色々な感情で満ち、キャパシティを完全に超えてしまう。


「は。あいつ、本人を目の前にして感動してやがる」

「本当に、よっぽど好きなんだね」

「ふーん…。良かったね」


トゲトゲしい天の言葉に、我を取り戻す。何か早く言葉を口にしなければ、ミクに怪しまれてしまうかもしれない。
私は彼女から顔を背け、熱くなった首の後ろに手をやって、照れ臭いのを隠す。
そして口を開いた。


『えっと…あの、私は…私の名前は、中崎春人と』

「っっ、中崎くん!!」


不自然に私の名字を叫んだのは、社長だった。

ミク、楽、龍之介の3人は顔を傾けた。どうして、いま名乗ったばかりの名前を叫んだのだろう?と。

私と天は思った。
あ、バレた…と。


「中崎くん…!中崎くんっ、私は」

『はじめまして』

「私はずっとっ、中崎くん、君に…謝りたくて」

『はじめ まして』

「……はじめ…まして…」


ふらふらとこちらへ近寄って来る社長。丁寧に両手で名刺を差し出して、2度目の はじめましてを告げた。
なんとか事情を汲んでくれたのか、彼はそれを受け取って、同じ言葉を返してくれたのだった。


「……」
(こんなに異様な雰囲気の初対面はないでしょ。ふつう)

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