第6章 この子はオレとユキのお気に入りなの!
「はい。もう一個どうぞ」
まるで犬にご褒美でもあげるように、千は2つ目のプリンを私の目の前に置いた。
『…頂きますけど、百さん。さきほどのN局との会食の件、よろしくお願いしますね』
「分かってるってー♫詳細決まったら、さっき貰った名刺の番号に連絡入れるよん」
思わぬところで棚ぼただ。TRIGGERをもっともっと有名にする為に、テレビ関係者の上層部との繋がりは必須!
きっと百の事だから、お偉方との関係は良好に築けているだろうし。こんな形でおこぼれにあやかれるとは、ラッキーである。
「でもなんで八乙女事務所はさ、作曲家が君だって事隠してんのー?」
『私に作曲のオファーが来ない様にですよ。今の私は、TRIGGER以外に曲を書きませんから』
事実あの曲を作った作曲家は、さきほど千が言ったように “ H ” として発表している。私の名前ではなく。
実際、謎の作曲家 “ H ” の正体について 突っ込んで聞いてくるマスコミもいたが、結局は 本人がメディアへの露出を拒否している。の一点張りで通した。
「…へぇ。ますます君に興味が沸いたよ」
2個目のプリンを完食した私は、なんだか嫌な予感がしてきたので お暇するべく立ち上がる。
『では私はそろそろ』
「待ってよ!」「待ちなよ」
2人の声が私を呼び止める。
「春人ちゃんにさー、ぜひともお願いしたい事があるんだよね!」
『…聞くだけ聞きましょうか』とりあえず
「明日1日、僕達のマネージャーやってくれない?」
『却下です。ど却下です』
何を言い出すかと思えば。言わずもがな、私にはTRIGGERのプロデューサーという仕事がある。
彼らの悪ふざけに付き合っている時間などあるわけがない。