第6章 この子はオレとユキのお気に入りなの!
「まぁ、君を呼び出した事に 大した意味は無いんだよ」
『…え?』
「そうそう!ちょーっと面白そうだな、お話ししたいなー!って思っただけだから!」
なんだ。そんな軽い理由だったのか。変にビクついてしまった自分が馬鹿みたいだ。
貰ったプリンの、約半分ほどを平らげた私は 彼らに問う。
『話って、例えば何についてですか?』
「んーー例えばーそうだなぁ。TRIGGERがブラホワで歌った曲、作ったのって誰?」
『さぁ。私は聞かされていませんので』
「いいね、そのノータイムで嘘を付ける狡猾さ。やっぱり春人ちゃんは面白い」
出来るだけ動揺を押し隠したつもりだったが。千は私の嘘を瞬時に見抜いた。
なるほど。嘘付きには嘘付きが分かるという。彼も私と同類か。
「TRIGGERのプロデューサーである君が、作曲者を知らないはずがないね。誰かに口止めをされているのかな?
表向きは “ 作曲者 H ” だっけ?その謎に包まれた人物の正体はいかに、って感じかな。
うん。やっぱり凄く興味あるな」
私は千の言葉を、まるで聞こえないように流してプリンを頬張る。
「…今度オレ、N局のお偉いさんとご飯行くんだよね。誰か良い同行者探してるんだけどなぁ」
『あの曲は私が作りました』
「…っぷ、…ふふ。春人ちゃん。口の横にプリンが付いているよ。僕が綺麗にしてあげる」
あまりの空腹に、ガッついてしまったからだろう。全く気が付かなかった。恥ずかしい…。
しかも千のハンカチで拭き拭きされてしまった。
「やっぱり春人ちゃんが作ってた!なんとなくそう思ってたんだよねー!」
『…どうして私だと?』
チロリと 盗み見る様に百を見上げたが、答えたのは千の方だった。
「さぁ。あえて言うなら…同じ作曲家としての、カン」
『…いいですね。それ、便利そうです』
そんな都合の良いカンが本当にあるならば、ぜひとも私も欲しいものだ。
私が言うと、千はその綺麗な瞳を 美しく細めるのだった。