第44章 余裕たっぷりの顔して そこに立ってりゃいい
「お次はTRIGGER。3人が歌ってくれるのは…?徳長英輝さんの “ レイニー&ブルー ” だったね。うん…これもまた、良い曲なんだよねぇ」
「はい。この名曲が誕生した時には、ボクはまだ産まれていないのですが。それでも、メロディも歌詞も覚えてしまうくらい聞き馴染みのある曲です」
「本当に、こんな素晴らしい曲のカバーをさせてもらえるなんて感激です。いま、自分が持てる力の全てを出して歌い上げたいと思います!」
天と龍之介の言葉の後、女性MCが まだ口を開いていなかった楽にも話を振る。
「八乙女さんも、この曲はお好きですか?」
「もちろんですよ」
「あはは、ですよね。どのようなところがお好きですか?」
「そうですね…
強いて言えば、冒頭です。
雨の中の電話ボックスで、愛しい人に電話をかけようとするんですよね。でも、ふと気がつくんですよ。
あぁ そうだ。その人はもう、自分の恋人ではないんだったと。
切なく、なるんですよ。もう…愛しい人に会う事も、声を聞く事も 出来ない男の心境を想像して」
『………』
質問したMCも、観客も、私も。楽の切ない表情に胸が締め付けられた。
まるで、泣き笑いしているような 悲しげに揺れる瞳。
心臓を、掴まれたように。楽から目が離せなくなった。
「ますます、TRIGGERが歌ってくれるレイニー&ブルーが楽しみになりましたね」
「そ、そうですね!では、早速歌って頂きましょう!御二組は、スタンバイをお願いします。
Re:valeで “ ギザギザハートのララバイ ”
TRIGGERで “ レイニー&ブルー ” 2曲続けてお聴きください」
カメラに手を振るRe:vale。微笑をたたえるTRIGGER。2組は、それぞれの特設ステージが組まれたスタジオへと 移動を開始する。