第44章 余裕たっぷりの顔して そこに立ってりゃいい
生ではないので、進行は止まらずにそのまま撮影は続行される。
「じゃあまずは、トップバッターのRe:valeと、その次に歌ってくれるTRIGGERに話を聞いてみようか」
司会者に促され、Re:valeは司会者の右。TRIGGERは左にそれぞれ進み出た。
そこで、メインMCと共にトークを繰り広げる。
「えっと?Re:valeが歌ってくれるのは、チェックズの “ ギザギザハートのララバイ ” だったよね。うわぁ、懐かしいなぁ」
「はい!もう名曲中の名曲ですよね!そんな曲をカバーさせてもらえるなんて、オレ 昨日は緊張して一睡も出来なかったんですよ!」
「こら、モモ?嘘はいけないな。昨日 君はよく寝てたじゃない。僕の隣でね」
「えぇ!?いやだっ、恥ずかしい!ちょっとダーリン!そういうのはカメラの前で言っちゃ駄目な奴だからね!」
いつもと変わらぬ軽快な夫婦トークで、緊張感が漂っていた現場が少し和む。
今度は、女性MCが千に話を振る。
「作曲をご自身で手掛けられる千さんですが、この曲を どう見られますか?」
「そうですね…言うまでもなくメロディも素晴らしいですけど。でも僕は、この曲の歌詞が好きです。
若さゆえ、不器用な自分自身をうまくコントロールできず、周りに迷惑をかけてしまう。それでもなんとかもがき続けて、やがて大人になってゆく。そんな、良い意味で人間臭いところが表現されてるような気がします」
千の私的な見解に、誰もが深く頷いた。
「あと、その衣装も良いね。やっぱりチェックズに合わせて来たのかな」
「はい!やっぱりチェックズと言えば、チェック柄ですから!ほら、見てくださいここ!千は襟のところ。オレは袖の折り返しのところに、チェックが入ってるんですよ。さりげなくて可愛いでしょう?」
「はは。うん、お洒落だねぇ。2人とも、よく似合ってるよ」
男性MCは、元気な百の返答に満足そうに頷く。
そして、今度はTRIGGERの方へと向き合った。