第44章 余裕たっぷりの顔して そこに立ってりゃいい
立ち上がった2人に、TRIGGERのリーダーである楽が締めの挨拶をする。
「じゃあ、本番ではよろしくお願いします」
「こちらこそ!楽しみにしてるよ!TRIGGERが歌う “ レイニー&ブルー ” 」
「徳長英輝さんの名曲のカバー、頑張ってね」
「はい。精一杯、歌ってやりますよ!」
百と千の激励に応え、楽はガッツポーズを見せた。
そして今度は逆に龍之介が、Re:valeの2人に言う。
「えっと、お2人が歌われるのって たしか… “ ギザギザハートのララバイ ” でしたよね」
「そうそう!千と、オリジナルの振り付けバッチリ練習したんだ!」
「やはり、名曲のカバーともなれば気合も入りますよね」
「うん、そうだね。
じゃあ、また後で。お互い名曲に恥じないよう 頑張ろう」
元気に手を振って、扉から出て行く百。その後に千、凛人も続いた。
再び4人になった楽屋。私はチェックの続きに取り掛かる。
今日は、生放送でもなく、出演者の数が多い。その2点の理由から、リハーサルの時間は用意されていない。出来る事と言えば、実際に歌うステージに赴き、立ち位置のチェックをするくらいだろう。
ミクの事も気になるが、まずは自分達の事を考えなければ。
彼らが歌うのは、誰もが知る昭和の名曲達。中途半端をすれば、過去の名だたる歌手達のファンを敵に回すのは明白だ。
しかし、そんな不安を杞憂のものにしてしまえるほど練習は積んできた。
『さ。それでは 関係者各位と諸先輩方への挨拶回りに行きましょうか』
「!!
春人くん…」
「やっといつもの あんたの顔になったな」
「もう今日は、ミクの事しか考えられないのかと思ってた」
『何を馬鹿なことを言ってるんです。私は貴方がたのプロデューサーですよ。
こういう言い方はあまり好みませんが…
私が1番愛しているのは、間違いなくTRIGGERです』