第44章 余裕たっぷりの顔して そこに立ってりゃいい
「へぇ!春人ちゃんを、救ってくれた歌。かぁ…」
「それはぜひ、僕らも生で聞いてみたいものだね」
『駄目です』キパッ
「「えぇ…」」
『貴方がたのような大物に見物されては、ミクが恐縮するでしょう』
キッパリと言い放った私に、百と千はげんなりした表情を見せた。
「おーい。男の嫉妬は見苦しいぞ」
「春人くん、ついに独占欲まで出てきちゃったよ」
「ここまで来ると重いよね」
TRIGGERの揶揄など、なんのその。ミクが緊張してしまう可能性は、何としても排除しておかなければ。
トントントントン
「失礼します!
あぁっ、2人とも!やっぱりここにいた!探したんですよ」
丁寧な4回ノックの後に入室したのは、Re:valeのマネージャー。岡崎凛人だった。
挨拶よりも先に、百と千の姿を見つけて呆れたような言葉を口にした。
「困ります!挨拶回りをしてくると言って、そのまま姿を消しちゃうんですから!」
「あはは!ごめんねー」
「ごめん、おかりん」
『岡崎さん。ご無沙汰しております』
「あぁっ中崎さん!これは失礼しました。どうもお世話になってます。TRIGGERの皆さんも、ご挨拶が遅れてすみません」
丁寧なお辞儀を見せた凛人に、メンバー達も会釈を返す。
『お探しのRe:valeさんはこちらですよ。本番前でお忙しいでしょうし、どうぞ速やかにお連れ下さい』
「中崎さん…いつも本当に、うちの2人がお世話をおかけしまして…」
『いえ。とんでもないです。お2人には、いつも私達が助けられていますよ。感謝しています』
「ちょ、ちょっとダーリン聞いた?!春人ちゃん、オレ達に感謝してるって…!なんだか普通に感動しちゃう!」
「ふふ。そうね。くすぐったくて、普通に嬉しいね」
『……普通に社交辞令の常套句ですよ?』
ニヤリと言い放つ私を見て、2人は悲しげな顔をする。そして、退室の為に立ち上がるのだった。