第44章 余裕たっぷりの顔して そこに立ってりゃいい
「はぅ…っ。大人気なく後輩を言い負かすユキも、イケメンっ!」
『…百さんは相変わらずですね』
天と千の静かな睨み合いを見て、熱い溜息を漏らす百。相変わらず良い性格をしている。
私が言った、その “ 相変わらず ” の意味が、どれくらい彼に伝わったのかは分からないが。
百は、ニカっと笑って私の腕を取った。
「あっはは!そうそう。オレってば相変わらずなの。相変わらず、虎視眈々と美味しいところを狙ってるんですぞ!?
ってことで…あっちでオレとお話ししようよ!」
「「抜け駆けしない!」」
「あぁ!!すごいすぐバレた」
睨み合っていた2人は、同時に顔をこちらに向けた。そんな様子を見ていた楽と龍之介は、首を傾げながらも溢す。
「あはは!相変わらず春人くんはモテるなぁ」
「男にモテても何の自慢にもならねぇけどな」
そして、Re:valeの2人はソファへと腰掛ける。どうやら完全に居座る気らしい。
その向かい側に、TRIGGERも同じ様に座った。
私は そんな彼らを視界には入れつつ、自分の仕事をする。とりあえずは衣装のチェック。それが終われば、番組プロデューサーに挨拶だ。あとは、TRIGGERが実際に歌うステージも自分の目で見ておきたい。
あれやこれや考える私の背中に、千は語りかける。
「それで?春人ちゃん。さっき、あのおじさんを熱い眼差しで見つめていたのはどうして?」
「ははっ、千さん 違いますって。こいつが見ていたのは、その男の隣にいたアイドルの方ですよ」
忙しそうな私に変わって、楽が代わりに答える。
「へえ、アイドルの子を見てたんだ?でもなんか意外だね!どうしてそのアイドルが気になっちゃう感じ?」
『……かくかくしかじかです』
「かくかくしかじかじゃあ分かんないよぅ!」
「百さんっ、代わりに俺が説明しますんで!」
今度は龍之介が、私の代わりに口を開いた。そして、ご丁寧にも事の成り行きを説明するのだった。