第6章 この子はオレとユキのお気に入りなの!
「まぁ座って。母さんや、春人ちゃんにお茶を」
「はいはい、よく来てくれたねぇ。あっほらもうお父さん、そんな所に寝転がってないで起きて下さいな」
どうやら百が母役。千が父役らしい。
また…強引にRe:vale劇場の観客にされてしまった。
いや今回に限っては、もはや演者にまでされている事態だ。私は久し振りに帰省でもした子供の役といったところか。
『いや、あの。ところでどうして私はここに呼ばれたんですか?』
私が言うなり、ピタリと2人の動きが止まって、4つの瞳がこちらを向く。
「えへっ、それなんだけどさぁ」
「モモ。せっかくだから、さっきもらった差し入れでも食べながら聞いてもらったら?」
「さっすがユキー!ナイスアイディーア!」
すかさず百は、冷蔵庫まで飛んで行った。
そして戻って来た時その手には、厚紙で出来た白い箱があった。
「今日は差し入れでプリン貰ったんだ!春人ちゃん甘いもの好き?」
箱の中で輝くそれは…王様ぷりん!好きも何も大好物である。
しかも今日はバタバタしていたせいもあって、お昼ご飯にありつけなかった私。空腹も空腹。
「遠慮しないで」
『…頂き、ます』
あぁ……うまぁ…っ。
さすがだ。王様という名を欲しいままにしている。強過ぎない弾力。滑らかな口溶け。少しビターなカラメル部分を一緒に口に入れれば、永遠に飽きが来ないよう完璧に計算し尽くされている!
「春人ちゃん、美味しそうに食べるねー?女の子みたいに可愛い顔、しちゃってるよん?」
『!!』びく
「…ふふ。何をビクついているのかな?モモはただ冗談を言っただけだ」
思わず、せっかくのプリンをスプーンから落としてしまうところだった。
それにしても…やはりこの2人は油断ならない。一体、何をどこからどこまで知っているのだろうか…。