鈴の音が届く距離で2〜王政改革の章〜【進撃の巨人/リヴァイ】
第3章 :大切な人〜再会と豹変❷
「おい…前に乗れ。」
リヴァイは少女に手を差し伸べ、馬上に引き上げる。
少女は横座りで、リヴァイの前に無言で座った。
「掴まってねぇと落ちるぞ。」
リヴァイの言葉に少女は、遠慮がちにリヴァイのジャケットを掴む。
「俺は最後尾で行く。行け!」
その号令で馬は走り出す。
馬が風を切り走ると、馬のたてがみと一緒に少女の髪も揺らす。
同時に少女の髪留めに付いた鈴が、リリリと小さく鳴った。
リヴァイはその優しい鈴の音を聞き、ほくそ笑んだ。
(…この香り、体温…落ち着く…)
少女はリヴァイのジャケットにそっと、顔を寄せた。
(どうしよう…眠い…。)
あの戦いからきちんと休んでおらず…エネルギー源の菓子も食べていない為、既に気力と体力の限界だった。
(寝たら…ダメ。頼らないって…決めたのに)
しかし少女の瞼は重く…限界だ。
そしてついに…完全に眠りに堕ちた。
「やっと寝たか…」
リヴァイはそう小さく呟き、少女の髪を優しく撫でた。
彼は気付いていたのだ…少女の体力が限界である事を。
そして馬上で寝る事を見越し、自分の馬に乗せた。
予想してたからこそ、共に乗りたかった。
久しぶりに感じる少女の体温・髪から発する香り…全てが変わらず愛しくて、リヴァイは少女を片手でギュッと抱きしめた。
(こいつ…一体何があって、こうなった?半年前…一体何があった?)
昔の素直だった少女を思い出し、ギリっと歯を軋ませる。
【落ち着いたらリンの話を、詳しく聞かせて欲しい】
ハンジがリコに言っていた言葉を思い出す。
半年前、リンの身に何が起きたのか?
何故変わってしまったのか。
聞かなければ少女の為に何も出来ない…連絡を促す事を決め、少女の頭に優しくキスを落としたのだった。
「おい、着いたぞ!」
リヴァイの言葉で少女は目を覚まし、慌てて掴んでたジャケットを放し距離を取る。
そして顔を上げると…見た事ある景色が広がっていた。
「懐かしいか?」
そう聞いたリヴァイに返答せず、少女は馬から1人飛び降りる。
(久しぶりだな…)
2年前…まだ調査兵団に来たばかりの事を、思い出していた。