第100章 仮面の男と新たな仲間
空に寝転がる水琴の視界に北側に広がる崖が入り込む。
鋭く尖る灰色の岩肌が海に向かい伸びているのを見て、あちら側に漂着しなくて良かったと水琴は自身の悪運に感謝した。
もしも向こうに引き寄せられていたら、あんな小船などあっという間に海の藻屑だっただろう。
そんなことを考えながらぼんやりと向けていた目に一瞬ありえないものが映り込む。
驚き目を見開き、ごしごしと目をこすってから水琴は再び目を凝らした。
確かにある。
ぬか喜びになるのは嫌だ。水琴は向きを変え今まで一度も行ったことがない北側の崖へ向かう。先程見えたそれはそこに確かに存在した。
まさかの展開にぽかんと口を開けるも早く二人にも報告しなければと水琴は風となり南の浜へ向かった。
「エース、デュース!」
保存食を作っていた二人の前に風となり現れ、水琴は今さっき見た光景を興奮と共にぶちまける。
「沈没船が落ちてた!!」
「はァ?」
突然の水琴の発言にエースが怪訝な声を上げる。
「何言ってんだ。沈没船は落ちねェよ。沈むんだ」
「あ、そっか。じゃあ乗り上げてたんだから……」
「難破船じゃね?」
「そこそんなに重要か?!もっと大事なことあるだろ!」
どこかズレたエースと水琴のやり取りにデュースが思わず突っ込む。
「水琴。その船はどこにあったんだ?」
「北の崖だよ。結構古そうだったけど、大型の船だったし中に何かあるかも」
「面白そうだな。行ってみっか」
「そうだな。行くなら早い方がいい」
退屈しのぎにちょうど良いとエースが立ち上がり、デュースもそれに続く。
今の時刻は朝食を終えて少し過ぎた頃。
目算だが北の崖までは二三時間はかかるだろう。向こうで少し探索しても何とか日が落ちるまでには帰ってこれそうだ。
三人は手早く森を歩く準備を済ませ、北の崖へと向かった。