第100章 仮面の男と新たな仲間
「まだ二人だけの海賊団だけどな。船医は早めに欲しかったところだ。これで三人。良い調子だな」
「待て。勝手に仲間に加えようとすんな!俺は海賊になりたい訳じゃねぇ。ただ冒険がしたいだけなんだ」
「海賊も冒険家も似たようなもんだろ」
「全く違うだろ!海軍に追われるお尋ね者なんかごめんだ。俺は本当の俺として堂々とこの海を生き、いつか『ブラッグメン』に負けないようなものすげえ冒険記を書いてやるんだ」
「本当の俺として堂々と生きたいなら、その仮面はいらなくねェか?」
エースの当然の突っ込みにお前には理解できないかもしれないけどな、とデュースは苦々しい表情と共に仮面に触れる。
「俺の元居た場所じゃあ海賊だの冒険家だのといって自由を求めて海へ出るような奴はバカにされるもんなんだよ。身内にそんな奴がいると知れたら家族もまとめて石を投げられたっておかしくねぇような、そんなふざけた故郷なんだ。そんな故郷に縛られてこの先生きるなんて御免だ。だから俺は仮面をつけて生きることに決めたのさ」
「船医が嫌なら航海士か船大工だな。どっちがいい?」
「お前本当に俺の話聞いてるか?」
「船医は嫌だって話だろ?」
「海賊にはならねぇって話だよ!!」
先程までの空気はどこへやら。
わいわいといつの間にか自身の夢さえも語るデュースの心境の変化に改めて凄いなと水琴は思う。
不思議なものだ。ほんの少しの関わりで、エースはいとも簡単に人の心を開かせてしまう。
彼の持つ雰囲気がそうさせるのだろう。北風と太陽の寓話のように、内から温め自ら開かせる太陽のような彼の雰囲気が。
しばらく漫才のようなやり取りを見守っていた水琴だったが、いつまでも終わらない様子にはいはい、と手を打ち話を打ち切った。