第100章 仮面の男と新たな仲間
「つまらねェかどうかは、おれが決める」
しかしそれより一瞬早くエースが口を開く。下を向くデュースにまっすぐな視線を向けるエースは話してみろよ、とデュースに続きを促した。
「少なくともおれは、海に出る理由につまらねェもんはねェと思ってる」
「………」
顔を上げエースと目を合わせたデュースはしばし逡巡するように目を閉じ、ゆっくりと開いた。
そこに拒絶の色はなかった。
そしてデュースは身の上を語った。元の島で医者の家系に生まれ、周囲に流されるがまま医学生として歩んでいたこと。
しかし自分の出来はどうも良くなく、父親からは恥をかかせるなと罵られ、出来の良い兄からはまるでいないもののように扱われていたこと。
「周囲の人間には本当にあの家の子かと馬鹿にされ、一緒にいれば馬鹿が移ると避けられた。……いてもいなくても変わらない。それなら俺は、本当の自分でいられる場所に行こうと決めたのさ」
偶然手に入れた冒険記『ブラッグメン』
その本との出会いがデュースを変えた。
読み終えた途端に目の前に鮮やかに広がった青い海は、どこまでも自由で美しかった。
あそこでなら自分は本当の自分になれる。
そんな強い確信を胸に、デュースは海へ出た。
「この仮面は、今までの人生との決別の証なんだ。__もう、出来の悪い医学生はどこにもいない」
「へー、デュースは医学生だったのか。なら船医だな」
重々しく語るデュースの言葉をどこまで聞いていたのか。軽い口調でのたまうエースをお前話聞いてたか?とデュースが半眼で睨んだ。
「出来が悪いっつっただろ。それに船医ってどういうことだ?」
「言ってなかったか?おれたち海賊なんだよ」
「海賊?!」
ぎょっと目を見開きデュースがエースと水琴を交互に見る。
確かにここから無事に出ることを優先していたためそういった話はしていなかったように思う。
実はそうで、と水琴が頷けばようやく本当だと信じたのか、デュースはマジかよ、と呟いた。