第100章 仮面の男と新たな仲間
「そろそろ休憩にしねェか?魚獲ってきたから飯にしようぜ」
岩場を乗り越えエースが魚を片手に戻ってくる。向こうには窪地があり、浅瀬を住みかとする魚が生息していた。
今日もコルボ山での生存術を大いに発揮しているエースにありがとうと声を掛け魚を受け取る。
ワタを取り串に通し、火を起こして焙る。
手慣れた工程をちゃっちゃと済ませていけば、しばらくして辺りには香ばしい魚の焼ける匂いが漂い始めた。
三人で火を囲み魚を手に取る。ほんの少し塩を振っただけの魚はそれだけで十分美味しかった。
「それでな、よしとけばいいのに無理してやっぱり落ちやがって。ずぶ濡れになったアイツを何回引き上げたもんか」
食事の席で決まって行われるエースのルフィ語りに水琴はうんうんと頷く。
どうやら十七の頃から弟節は健在だったようで、しょうのない弟だと言いながらもその表情は楽しそうだった。
唐突な別れだっただけに元気な様子のルフィの話を聞けて水琴も心なし安心する。
止まる様子のないエースの話を聞き流しながら、水琴はふとデュースへと目をやった。
彼もまたモビーのクルーたち同様エースの語りに飽き飽きしているのだろうかと思っていたのだが、黙り込むその様子はうんざりしているというよりは何か思い詰めたように感じられた。
「そういえばお前はどうして海に出たんだ?」
何か声を掛けようかと悩んでいた水琴の先を越しエースがデュースへと話を振る。
エースの言葉を受け、黙り込んでいたデュースは魚を一口齧るとおもむろに口を開いた。
「__レールの敷かれた人生ってやつから転げ落ちた。だから海に出た。ただそれだけの、つまらねぇ話だ」
場がしんと静まり返る。これ以上の詮索はするなというようなデュースの雰囲気に水琴は話を逸らすべきかと別の話題を持ちだそうとした。