第100章 仮面の男と新たな仲間
その日から三人でのサバイバル生活が始まった。
エースが材木などの調達をしながら細かな修理をし、水琴が水や食物を集めて食事の準備を行い、デュースがマスト作りを進めていった。
日の出と共に活動を開始し、日が落ちれば船の中で眠りに就いた。
寝具は二つしかなかったため床に敷き詰め川の字になって眠った。
最初こそデュースは男女で床を共にすることに抵抗があったようだったが、そこそこの体格の男二人で布団ひとつを共有することはさすがに嫌だったのか最終的には折れた。
意外にそういうところは気にする質なんだなと感心していればお前が気にしなさ過ぎなんだろとエースに突っ込まれた。そんなことは無いと思う。
そんなこんなで船は次第に元の様相を取り戻していった。この調子でいけばもう二三日あれば航海できるようになるだろう。__マスト以外は。
「調子どう?」
砂浜に座り込んでいるデュースへと声を掛ける。彼の手には短い二対の丸太が握られていた。いきなりマストでやって失敗は避けたいと彼は何通りもの丸太を作りどうすればより強くより頑丈に組めるか試しているようだった。
「ダメだな。いくつかパターンは絞り込めたが掘り込みが甘くて思ったように接合しない」
隙間があればぐらつき意味がないし、きつすぎればハマらず、無理に押し込めば折れてしまう。
緩すぎず、きつすぎず。ミリ単位の調整が必要な組木はまさに職人技と言えた。
選択肢がなかったとはいえなんとも大変な仕事を押し付けてしまったものだと水琴はややデュースに同情する。しかし脱出のためには彼に何とか頑張ってもらうしかない。
あの荒波を越えるには水琴の風がどうしてもいる。そしてその風を受けるためには、頑丈なマストは必要不可欠なのだ。