第100章 仮面の男と新たな仲間
それに、と水琴は用意してあった鍋を持ってきて二人の前に置く。
エースを探しに行く前に作っていた昼食のスープが湯気を立てているのをデュースは信じられないものでも見るような目つきで見つめていた。
「こういったサポートは任せて」
「お、ウサギのスープか。同じ釜の飯食えば知らねェ仲でもないしな。デュースも食えよ」
「………」
器に盛り差し出せば震える手で受け取る。
ゆっくりと具をほぐし、口の中に入れると一口一口を噛みしめるように咀嚼した。
二度、三度。口に運び、咀嚼し、嚥下する。
ぽたりとデュースの膝に水滴が落ちた。
「__うめぇな」
震える声が共に零れ落ちる。
ぽろぽろと堰を切ったようにあふれ出したそれに比例するようにスープを啜る手は早くなった。
「うめぇ。それに……あったけぇ」
あったけぇ、と呟くデュースを水琴は黙って見つめる。
たかが三日、されど三日。
明日の命をも知れぬ無人島で過ごす三日は、長かったことだろう。
初めてたった一人で過ごした夜の森を思い出す。
火も満足に点けられず、獣に脅え、寒さに震え、眠れずに早く日が昇れとひたすら祈り続けていたあの夜を。
あの時水琴も三日で音を上げ人里へ下りた。
ここでは音を上げることはイコール死だ。
極限の状態で、それでも理性を失わず生き抜いていた彼の精神力は並大抵のものではないだろう。
「__マストのことは、請け負った」
食事を終えたデュースはおもむろにそう切り出した。
「細工は俺がする。エースはマストの切り口を滑らかに仕上げておいてくれ」
「分かった」
「正直どれくらい時間がかかるか分からない。他の修理や食料の調達は任せることになるが良いか?」
「もちろん。デュースはマスト作りに専念してよ」
それぞれの役割を確認し、改めてエースを筆頭に三人は拳を付き合わせる。
「そんじゃ。脱出に向けて、いっちょやるか!」
水琴とエースにデュースを加え。
三人は脱出に向け、無人島サバイバルに挑むのだった。