第16章 家族
「んなっ!!」
ぎろりと遥か上から赤い瞳がエースを睨む。
両の翼から生まれる強風は構える暇すら与えずエースを後方へと大きく吹き飛ばした。
「なんだ、ありゃ」
多くの木々を巻き込んで吹き飛んだ先、エースがぺっ、と土を吐き出す。
「ゾオン系、幻獣の実、モデル“ドラゴン”
未知の力の前に倒れるがいい」
「へー。マルコ以外に幻獣の実って初めて見たな」
立ち上がり砂埃を払いのける。
「断言しよう。貴様は俺には絶対に勝てん」
「…へェ?大層な自信だな」
「力の優劣ではない。相性の問題だ」
「相性?」
どういう意味だ、と問うエースに対しこういうことだ、と口を開く。
口の奥、赤い炎が灯った。
ゴバァァァアアアアア!!!!
途端、巨大な熱がエースを襲う。
ドーランから吐き出された炎は周囲の森を一直線に焼き、物見台の小屋まで直撃した。
ガラガラと小屋が崩れる。
ずしん、とドーランが小屋へと近づく。
からんと落ちる瓦礫の合間から僅かにエースの足が覗いていた。
「熱っちィィ!!」
がばり!!とエースが起き上がった。
バタバタとチラつく火の粉を手で払いながら、エースは必死に熱を冷ます。
「は、なんで熱ィんだ…?」
炎人間である自分が感じる久しぶりの感覚に首を捻る。
「熱くて当然だ。ドラゴンの炎は地獄の炎。どんなものも呑みこみ容赦なく焼き尽くす。現世の炎も例外ではない」
「ほォ…地獄ね」
「沈め火拳!!」
ふるわれる巨大な爪から身を起こし逃げる。
覇気を纏ったあれにやられたら一発でアウトだ。
「火銃!!」
ガラ空きのわき腹に火銃をお見舞いする。
が、炎の弾丸は鱗に弾かれ消えた。
「!!」
「無駄だ!!」
鋭くふるわれた尾がエースを正面から捉える。
まともに受けエースは激しく木に打ちつけられた。
「ぐ、はっ!!」
「ドラゴンの鱗はあらゆる攻撃を弾く。お前に打つ手はない」
「___さァ、それはどうかな」
完全に不利な状況で、エースは笑う。
その瞳に絶望はなく、あるのは好戦的な光だけ。