第16章 家族
「ちっ、きりがねェな…」
次から次へと現れる海兵にさすがのエースもうんざりしてきた。
「エース。親父たちが到着したよい。ここは任せて先に行け」
同じことをマルコも感じていたのだろう。告げられた言葉に港を見ればモビーの大きな姿が現れた。
「あァ、そうさせて…?!」
戦線を離脱しようと踏み込もうとした足元に何かが突き刺さる。
咄嗟に足を引けば、そこにはいつの間にか大きな水たまりが出来ていた。
「……水?」
「この先へは行かせません」
一本橋の入り口を塞ぐように、一人の女が立ちふさがる。
女が手をかざせばそこには水が生まれ、まるで生き物のようにその腕を取り巻いた。
「…能力者か」
「平和と秩序の維持のため。ここで散りなさい海賊ども」
「__エース、行け」
対峙したままマルコが呟く。
「あの女、たぶん水系の能力者だ。お前じゃ相性が悪いよい」
「おォ!」
女の横をすり抜けようとエースが走る。その姿に腕を振るう女だったが、マルコの蒼い炎に押し留められた。
「お前の相手は俺だよい」
「…不死鳥マルコ」
「俺じゃ不服ありってかよい」
「不服とか、そういう問題じゃありません。ただ、海賊は消す。それだけです」
「そうかよい。それじゃあ遠慮なく…」
マルコの身体を蒼い炎が包み込む。
同時に女の周囲にも水がうねる。
巨大な力がぶつかり、爆ぜた。
***
一本橋を渡りきり、エースは離れた所に見える塔を見上げた。
あそこに水琴はいるのだろうか。
塔へ向かうため、一歩踏み出した時銃声が響いた。
「そこまでだ火拳」
銃を空へと向けたドーランがエースを見据える。
「そんな物でおれを止めようってか?」
「ロギア系相手にそんなつもりは毛頭ない」
「へェ。じゃあどうすんだ。通さんと言ったわりにはあの橋も呆気なく渡らせてもらったしな」
「勘違いしないでいただこう。あの橋は、私にとって少々手狭だっただけのことだ」
銃を捨て、身を屈める。
次第にめりめりと、服の下から嫌な音が聞こえてきた。
エースの目の前でドーランの身体が歪む。
そして生まれる炎。
ドーランの身体を一気に包んだと思えば、そこから生まれたのは巨大な竜だった。