第16章 家族
「無駄な足掻きはよせ。地獄の炎に、ただの炎が敵うはずない」
「……ただの炎じゃねェさ」
あれは初めてエースの能力を間近に見た水琴が言った言葉。
__エースさんは、太陽みたいですよね。
悪魔の実なんて常識外れなものを怖がりもせず、にっこりと言いきった。
「お前が地獄なら、おれは太陽だ」
「__下らん」
「そう思うならもう一度吐いてみろよ」
「後悔の中死ぬがいい」
再び口が大きく開かれる。喉の奥で赤く地獄の炎がチラつく。
ゴォ______ッッ!!
先程よりも大きな紅蓮の炎がエースを襲った。
炎が鎮まった後には、何も残らない。
「…塵も残さず消えたか」
呆気ないものよ、とドーランが元の姿に戻ろうとする。
そこで違和感に気付いた。
__この時を待ってたぜ
灰になったはずのエースの声が響く。
「貴様、まさか中に……!!」
__鱗は攻撃効かなくても、腹ん中はどうだろうな?
ゴォッ!!!と巨大な火柱がドーランを包み込む。
全身黒こげになり、白目をむき倒れ伏すドラゴンの横には炎を纏ったエースの姿。
炎を吐く瞬間口の中へ飛び込んだせいであちこち焦げ付いている。
「でかくなったのが災いしたな」
灰を被った帽子を振り深く被り直すと、エースは今度こそ塔を見上げる。
「ちっと時間取っちまったな…」
無事でいろよ、と呟き塔へ駆け出した。