第100章 仮面の男と新たな仲間
「職人の間に伝わる組木技術がある。木材に特殊な切れ込みを入れることで釘を使わずに繋ぎ合わせることができるんだ。
強度も強く、熟練の職人が組木で手掛けた建築は向こう百年は倒れないって話だ」
「百年だって?そりゃあすげェな」
「よく知ってるね」
「本で読んだことがあるだけだ」
感心すれば気まずそうに視線を逸らす。どうやら褒められ照れているらしい。
あまり慣れていないのだろうか、と思っていればエースがじゃあお前マスト係な!とデュースを一番難解な役に抜擢した。
「その組木?っていうのやってくれよ」
「いや待て。知識として知ってるだけだ。素人が適当にやってうまくいく保証は__」
「おれと水琴は知らなかった。お前は知ってる。そして釘はない。なら誰が適任かは明白だろ」
事実を突きつけられデュースがうぐ、と口ごもる。
それでも何か引っかかっていることがあるのか、だが、とかしかし、とかまごついてばかりのデュースに首を傾げる。
「__この船はお前らの船だろ。脱出の重要な要を、出会ったばかりの見ず知らずの男に託していいのか」
うまくできる保証はないんだ、と小さく呟かれた言葉に水琴とエースは目を合わせる。
「見ず知らずの男、じゃねェよ」
「もう私たち仲間でしょ?」
そう返せばデュースは驚いたように目を丸くした。
生きるか死ぬかの無人島で偶然にも集った三人だ。
運命を共にする仲間と言わず何と呼ぶのだろう。
「失敗なんかいくらでもしろよ。木材はたらふくあるんだ」
「もちろん押し付けたりはしないよ。手伝えることがあれば手伝うし」