第100章 仮面の男と新たな仲間
「__この前の嵐で俺の船も壊れてね。荷物もほとんど、船ごとデービー・ジョーンズに寄付してやった」
突然善行を積みたくなったもんでな、と力なく皮肉る男にそりゃ災難だったなと同情する。
命が助かっただけいいとは思うが、船が無くなったのはきつかったことだろう。
「そういや名乗ってなかったな。おれはエースだ。アンタは?」
「……名乗るような名前なんかねぇよ」
「呼ぶとき不便だろ。名前くらい名乗れよ。じゃあマスクしてるからマスクマンでもいいか?」
「適当かっ!!」
顔を上げて抗議する男にいいじゃねぇかよマスクマン、とエースはうんうんと頷く。
「話は戻るけどよマスクマン。今船作ってるんだけど人手が足んねェんだ。手伝ってくれねェかマスクマン」
「マスクマンマスクマンうるせぇよ!」
「文句が多いな。じゃあ自分で何か名乗れよ」
そう返せば男はぐっと詰まる。なぜそんなに名乗りたがらないのだろうか。
名前を知らしめたいエースから見ると男の逡巡は全く理解に苦しむものだった。
「__そうだな、ペンネームでいいならいくらだって教えてやる」
「ペンネーム?」
「エースっていうのはいい名前だな。ペンネームにはぴったりだ」
押しの強いエースに対する皮肉か。男の言葉にピクリとエースは反応する。
「……おい。どんな名前名乗ったっていいけどな。それだけはやめろ」
「なんでだよ。何か名乗れって言ったのはお前だろ。なら俺がエースと名乗ったって構わねぇだろ」
「ダメだ。おれはこれからその名前でこの海をのし上がっていくんだ。真似すんじゃねェよ」