第100章 仮面の男と新たな仲間
しばらく歩けば潮の香りと共に波が打ち寄せる音が聞こえてくる。南の浜辺と同様白い砂はきめ細かく、まるで南国の楽園のような光景だ。見かけだけは。
さすがに六日もいればエースも飽き飽きとしてくる。さっさと出て行きたい気持ちを燻らせながら、何かめぼしいものはないかと辺りを見渡した。
砂浜には見たところ何もない。
修理には使えなさそうな木の枝や貝殻、木の陰には一人の男が座り込んでいるだけだ。
__一人の男?
素通りしかけた視線をエースは慌てて戻す。
見間違いではなかった。確かに、木陰には一人の男が座り込んでいた。
水琴は人はいないと言っていたが、もしかしたら集落があるのだろうか。
期待を胸に足早に近寄る。だがなんだか様子がおかしい。
座り込んだその背中は力なく項垂れており、隣の何かにぶつぶつと話しかけているようだった。
ちらりと横を見る。そこには随分と前にエースたちと同様の悲劇に見舞われたのだろう先客が骨だけを晒していた。
「お互い災難だったな……」
まだエースに気付かないその男は悲壮感に満ちた声で小さく呟いた。
どうやら相当追い詰められているらしい。いつからいるかは知らないが、もしエースがあと一日ここに来るのが遅ければ自害でもしてしまっていたんじゃなかろうか。
島民ではなく同じ境遇の遭難者だろうと当たりをつけたエースはおい、とその背に声を掛けた。
「アンタも遭難した口か?他にも誰かいるのか」
「………」
男は答えない。いや聞こえていないようだった。自分の殻に閉じこもり、ぶつぶつと何かを呟き続けている。
これは関わらない方が良かっただろうか、とエースはちらりと思った。
しかし発見してしまった手前、このまま放置しのたれ死なれても後味が悪い。
なによりこのまま放って帰ったと知れば水琴が煩そうだ。