第100章 仮面の男と新たな仲間
とりあえず一時間をめどに散開する。修理にどれだけ時間がかかるか分からないので飲み水の確保は重要だ。
手っ取り早く湧き水などあればいいのだけれど。
森の中に入る前に水琴は再び風詠みを行う。さっきは島全体をざっと眺めただけだったが、今度は木々の間を縫うように風を走らせる。
見たところ大型の獣はいないようだ。だが小動物が顔を覗かせているのを見て少し希望が持てる。
動物が生きているということは、大小なりとも真水はあるのだろう。
答えはすぐに見つかった。こういう時本当に風は便利だ。
位置を確認した水琴は風になり目的地へと駆ける。岩の隙間から流れ出ている水は川や泉になるには心もとないが、付近で生きる小さな生き物たちの命を繋ぐには十分な量だった。
突然現れた水琴に逃げるウサギやリスにごめんねと謝罪してから水琴は持ってきた容器に水を入れる。
「少しだけ分けてね」
水は何とかなりそうだ。あとは果物なんかもあるとありがたい。
周囲の木々を見上げる。少しして頭上高くに何かがなっているのが見えた。
とてもじゃないが登って採れる高さではない。水琴は手を掲げ、実へと向けた。
スパ、と小気味良い音と共に茎が切れ重力に従い落ちてくる。
「うん、美味しそう」
手に収まった紫の果実に、水琴は満足そうに頷いた。