第15章 それぞれの想い
「ベルク!お前それは軽々しく使うなと…!」
「海軍にとっても貴重な研究対象をむざむざと手放すのか?無理だろう。私は塔へ向かう。後は任せた」
「…!いやっ!!」
抵抗するが力で敵うはずもなく、力任せに引きずられていく。
「……大佐」
そっと影からかっちりと制服に身を包んだ女性が現れた。
「…火拳たちを討ちとる」
「はっ」
一方、海軍の軍艦だけが立ち並ぶ港に一隻の白い鯨が近づいていた。
既に騒ぎになっていた基地の様子を甲板から多くのクルーが見守る。
風に乗り聞こえてきたエースと水琴の声に、甲板のクルーは皆静まり返っていた。
「水琴……」
「水琴ちゃん……」
水琴の想いを初めて知り、顔を見合わせるクルー。
一番辛いのは彼女だというのに、海賊である自分たちのことを考える彼女に言葉が出てこない。
「グララララ!!!聞いたか野郎ども。…さぁ、我らが姫さんを助けに行こうじゃねェか」
「「「「「おぉぉぉおおおおお!!!」」」」」
開戦を告げる砲撃が響き渡った。