第99章 信頼
眠りこける水琴をカーテン越しに見つめ、エースはベッドに座り込んでいた。
昼間のこともあり、水琴はぐっすりと眠りこんでいる。
__死んでほしくなかったからに、決まってんでしょ!!
__エースはこの世界で唯一頼りになる存在なんだからね
昼間怒鳴り合った中で聞いた、水琴の言葉。
「訳わかんねぇ……」
仲間とはいえ、どうして知り合ったばかりの男をそう簡単に信頼できるのか。
__エースなら、すぐあの船長ぶっ飛ばして、助けてくれると思ったから。
もしも間に合わなかったら、とか。
おれが逃げたらとか。
そういうことは考えなかったんだろうか。
むしろ、おれが生きてるかどうかさえ定かでない状況で、どうして命を懸けてまで助けようとしたのか。
__だって、エースだから。
打算でも、計算でもない。
そこから感じるのはまっすぐな信頼だった。
へらりとした緊張感のない笑顔が昔のルフィと重なる。
__いや、それ以外にも重なる影があるような気がした。
子どもの頃、何も信用できなかったおれに対してまっすぐな愛情を向けてくれた人物。
サボやルフィじゃない。
__エース。
もっと大人で、確か……
__私は、エースが好きだよ。
「……エース」
名を呼ばれどきりと心臓が脈打つ。
息を殺してカーテンの隙間から様子を窺うが、どうやら寝言だったらしい。
むにゃむにゃと寝返りを打っているのに息を吐く。
「……のんきな顔してんじゃねェよ」
もう考えていたことはすっかり闇の中に消えてしまった。
エースもごろりとベッドに横になる。
「……お休み」
ふわりと、水琴が笑った気がした。