第99章 信頼
「こっちだって必死だったんだからね!雨も降ってて能力も満足に使えなかったんだから!」
「だったら敵船に乗り込んでくるんじゃねェよ!おれはここにいろって言っただろ!」
「ここにいたらエースが落ちたのに気付かなかったかもしれないでしょ!助けなきゃ良かったって言いたいの?!」
「無理矢理海賊に引き込んだ男命がけで助けてどうすんだよ!危なかったら逃げりゃいいだろ!お前は死にてェのか!!」
「死にたいわけないでしょう!」
「じゃあ、なんで助けてんだよ!」
「死んでほしくないからに、決まってんでしょ!!!」
今までで一番大きな水琴の声に、しんと場が静まり返る。
「__エースにとってみたら、私なんか少し便利な居候くらいの感じでも。私にとっては、エースはこの世界で唯一頼りになる存在なんだからね」
この時代で、たった一人。
仲間になれと誘ってくれたその声が、どんなに力強く感じたかエースはきっと知らないだろう。
未来の仲間だからじゃなくて。
今この場で生きているエースに、私は救われた。
「……でも、お前が死んじゃ意味ねェだろうが」
「だから、死ぬつもりなんか無かったんだってば」
「じゃあなんで飛び込んだんだよ!」
「エースなら、すぐあの船長ぶっ飛ばして、助けてくれると思ったから」
へらり、と笑う。その笑顔を見てぐっとエースは詰まった。
「なんでそんな、信じられんだよ……」
「だって、エースだから」
理由にならない理由に訳わかんねェとエースはごろりと横になった。
甲板に座り込んだまま水琴は空を見上げる。
さっきまでの嵐が嘘のように、晴天が広がっていた。