第99章 信頼
「おはよー!エース御苦労さま」
甲板の修理をしているエースのところへ水琴は飲み物を運ぶ。
あの海賊のせいでボロボロになってしまった船は油断すれば沈没してしまうのではないかというような荒れ具合だった。
水琴から飲み物を受け取るとエースはぐいとそれを煽り、ある程度の形を取り戻した船を見渡す。
「これで当分は大丈夫だろ」
「どこかでしっかりと装備整えないとね」
「もう少し先だな……あ、そうだ水琴」
道具を片付け船内へ戻ろうとしていたエースが振り返り、呼び掛ける。
「腹減った。飯頼む」
「はーい。……あれ?」
返事をした後、水琴は何か違和感に気が付いた。
なんだろうと考えること数秒。気付いたそれにあー!と水琴は声を張り上げる。
「エース!今、初めて名前呼んだ?!」
「あー。知らねェ」
「嘘!呼んだ!初めて!」
興奮してエースへ詰め寄る水琴を煩そうに見ながら、エースはだからなんだよと水琴を見返した。
「だって今までずっと“おい”とか“お前”だったのに!どういう風の吹き回し?」
「別に良いだろ。それより飯」
「もう一回呼んでくれなきゃダメ!」
「なんだそりゃ!横暴だ!!」
しばらく、呼んで!断る!と言い合いをする二人の姿が続いたのだった。