第99章 信頼
「その船じゃ重いだろ。もらってやるよ」
「誰がてめェなんかにやるかよ」
「……そうか」
さ、とドレッドの手が挙がる。
途端に何十もの銃口が一斉に水琴とエースへ向けられた。
「じゃあ死ね」
「エース!!」
「お前はここにいろ!」
撃たれるより前にエースは駆けだし、銃の死角へ隠れる。
雨のように降り注いだ弾丸は甲板を容赦なくえぐっていった。
「うっひゃあ?!」
逃げ遅れた水琴にももちろん銃弾は降り注いだが風であるこの身に効くわけもなく、全て身体をすり抜けてしまう。
「び、びっくりした……」
「何だあの女?!」
「もしかして悪魔の実か?!」
ドキドキする心臓を落ち着かせている間にエースは向こうの船へ乗り込んだらしい。
頭上から何かの破壊音や悲鳴がひっきりなしに聞こえてくる。
「ここにいろって言ったって……」
一人で全部片付ける気だろうか。
いくらなんでも無茶苦茶だ。
「あ」
見ればエースの目を盗み数人の海賊がこちらの船へ飛び移ってきた。
甲板へ足を踏み入れた海賊たちはギラリと光るカトラスを抜き構える。
「お宝よこしやがれ!」
「船長の許可がないので無理です」
なるほど、私はお宝防衛係らしい。
風を生み、臨戦態勢を取る。
「能力者め!」
「海へ落ちろ!!」
「そんな簡単に落ちるわけないでしょうが!」
狙い通り飛んだ風は見事に敵を吹っ飛ばした。