第99章 信頼
悩み続けるエースに頑張れ船長、と適当な声援を送り後片付けを済ませる。
食器も洗い終わり、そろそろ針路でも確認するかと外へ出ようとした時、大きな揺れが水琴を襲った。
「うわっとっと!」
バランスを崩し倒れそうになるのを背中からエースに支えられる。
礼を言おうと見上げれば、エースは険しい顔で外を見つめていた。
すぐさまドアを開け甲板へ飛び出していく。
なんだろうと同じように窓を見つめると、そこに見えたのは巨大なカギヅメだった。
それは深々と船縁に突き刺さっている。
「……はぁ?!」
よく分からない状況に水琴も甲板へ出る。
「お前ら、おれの船に何しやがる!」
外へ出れば巨大な船へ向かってエースが叫んでいた。
その船の両側から伸びたカギヅメはがっちりと船を固定し完全に捕らわれている。
「なんだァ?まだガキじゃねェか」
「ほんとにこの船かよ頭」
船の甲板から多くの海賊が胡散臭そうな目を向けてくるのに水琴は首を傾げる。
一体何の話だろうか。
「なァに。本人に聞いてみりゃ済む」
疑問符を浮かべる水琴を余所に海賊の間から現れたドレッドは甲板から二人を見下ろす。
「おい小僧。近頃この近辺の海賊船を荒らし回ってるのはてめェか」
「だったらなんだ」
大切な船を傷つけられてエースの沸点は既に振りきれ、殺気だった視線をドレッドに向けている。
そんなエースの殺気にも動じることなく、ドレッドはだいぶお宝集めたんじゃねぇか、とまるで友人に尋ねるような気安さで言葉を投げかけた。