第99章 信頼
「うめェ!!」
ダイニングで口いっぱいに頬張りながらエースが叫ぶ。
「口に合ったみたいで良かった」
「お前、料理うめェな!コックか?」
そういうわけじゃないが、どうやら子どもの頃から味覚はあまり変わってないらしいエースの好み通りの料理を作るのは朝飯前だ。
ダダンの所で料理担当しててよかった。
あっという間に空にしてしまった皿を前に律儀にもごちそうさまでした、と手を合わせるエースにお粗末様、と返す。
満足そうに椅子にもたれるエースにそういえば、と水琴は天井を指さした。
「ねぇ。ところであの旗はなんなの?」
この船に乗ってからずっと気になっていた、マストの上でたなびく無地の黒旗。
この世界にも数字と色の組み合わせで船の状態を知らせる信号旗というものがあるが、黒一色というのは聞いたことがない。
いったいどんな意味があるんだろうと水琴はエースに問い掛けた。
「普通あそこって海賊旗が掲げられるんじゃない?」
「あァ、まだデザイン決めてねェからな。仮旗だ」
良いデザインが浮かばねェんだよな、とエースはテーブルに突っ伏す。
なんだそういうことか、と納得する。浮かばないのも当然だろう。
確かスペード海賊団の海賊旗は炎を模していた。
まだエースは能力者ではないので、あの海賊旗が作られるのは当分先だろう。
「それじゃあこの海賊団の名前もまだ?」
「おォ。一生背負うもんだからな!妥協はしねェ」
ルフィは割とあっさり決めていたような気がしたが、エースはその辺りこだわりが強いらしい。