第98章 初めての共闘
「ようやく見つけたぜ」
「部屋で脱税の証拠を見つけました。観念してください。大人しくしてくれれば手は出しません」
とうとう目の前に現れた侵入者にダグラスはぎょっと目を見開き後ずさる。
そして水琴の手に握られた脱税の証拠を認め、はたから分かるくらい蒼褪めた。
「な、なんだお前ら!ウサロはどうした!」
「あいつなら書庫で寝てる」
「ちなみにあなたの息子ももう来ませんよ」
「な、何たること……ええい!早くあいつらを捕えろ!」
周囲の部下に怒鳴り散らすダグラスと戸惑いながらもじりじりと距離を詰めようとしてくる男たちを見て水琴は一歩前へ出る。
「エース。部下は私が」
「おう。任せた」
水琴の起こした風は簡単に男たちを部屋の端まで吹き飛ばした。
一瞬で沈黙した部下を見てダグラスは恐怖の視線を水琴に向ける。
「な、なんだ貴様その妙な技は……」
「後はてめェだけだ」
「や、やめろっっ」
一歩近づくエースから逃れるように部屋の隅へ寄る。
そして本棚を探るとダグラスは一丁の拳銃を取り出しエースへと向けた。
「エース!」
「せっかくこの地位まで上り詰めたのだ!貴族である私の人生を、お前のような薄汚い下位層にめちゃくちゃにされてたまるか!!」
ぴたりとエースの足が止まる。
「__貴族であるお前の人生って、なんだよ」
ただ、エースはそう呟く。
背後にいる水琴からはエースの表情は分からない。
しかしその声は静かに、怒りに満ちていた。
「町の奴らに不当な税を吹っ掛けて私腹を肥やす人生か?力に物言わせて罪のない住人を傷つける人生か?おれはなァ……」
ぐっ、とエースの拳に力が入る。
「貴族だ王族だとか言って、自分達のことしか考えちゃいねェ腐った奴らが、一番嫌いなんだよ……!」
「ひっ……!!」
エースの気迫に押されダグラスは身体を揺らす。
「く、くるなぁ!!」
恐怖に負け、ダグラスは引き金を引いた。
揺れた銃口から放たれた弾丸を軽く頭を揺らして避けたエースは地を蹴る。
銃を握ったまま固まっていたダグラスの視界に迫るエースが映り込む。