第98章 初めての共闘
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「……穏便にって言ってたのはどこのどいつだよ」
がちゃりとエースが扉を開ければまるで台風が過ぎ去ったような後のような惨状が広がっていた。
「そんなこと言ったっけ」
「……で、見つかったか弱み」
触らぬ神にたたりなし。
怒っている様子の水琴とノびているラディッツの間に何があったのかには触れず、エースは本来の目的を確認する。
「うん。見てこれ」
部屋の隠し金庫から見つけたの、と水琴が大量の紙の束を取り出した。
そこには数字がびっしりと記されている。
「ここの税収のまとめと国への報告書のまとめみたい。ざっと見たんだけど、いくつか抜けがあるんだよね」
いわゆる、脱税。
「国に納めるべき分をかすめ取ってるってわけか。立派な犯罪だな」
良い建前が出来た、とエースは口角を吊り上げる。
後は領主を締め上げるのみ。
二人はダグラスを探すため廊下へと出た。
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「侵入者は捕まえたか?」
「いえ、それが屋敷内に侵入したようで」
「何?!ウサロは何をやっている!」
自室に引っ込み部下からの報告を聞いていたダグラスは思わぬ内容に声を張り上げる。
どこのやつとも知れぬ鼠が勝手に屋敷中をうろついているというだけでも気色が悪いというのに、一向に収まらない騒動にダグラスはいらいらと爪を噛んだ。
「ここで騒ぎを大きくすれば国に怪しまれる。一刻も早く事態を収束するのだ!」
分かったら早く行け!と部下を急き立てていれば、部屋の重厚な両扉が激しい音を立てて吹っ飛んだ。
あまりの騒音と衝撃に悲鳴を上げることすらできず、ダグラスはその音の発生源へ目をやる。
そこには二人の人間が立っていた。