第98章 初めての共闘
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「ここ……」
エースと別れた後、水琴は一人屋敷内を散策していた。
エースが警備の者を引きつけてくれているおかげで誰にも見つからずに見て回ることが出来る。
いくつ目かの部屋で、水琴は肖像画のたくさん掛けられた部屋へと辿り着いた。
領主の一族のものだろうか。家族でのものや代々の領主のものなど様々な肖像画が並ぶ。
その部屋の一番奥。赤いカーテンに飾られるように一枚の肖像画が掛けられている。
水琴は自然とその肖像画に寄った。
「これ、もしかしてラディッツが言ってたお母さん……?」
ちらりと覗く黒髪にラディッツの言葉を思い出す。
水琴に瓜二つだという彼の母親。
少し興味を持ち、水琴は肖像画を覆っていたカーテンを少し持ち上げた。
中を見てぴしりと固まる。
長い黒髪。
色白の肌。
そこはいい。
しかし、造形はまるで水琴と似ても似つかない。
さながらその容姿は平安時代の美女と言えば聞こえがいいだろうか。
顔の大きさなど一回り以上違う。
なぜこの母親からあんな美系の息子が生まれたのか甚だ疑問だ。
遺伝子どこいった!!
「いや、その前にこの女性に似てると言われた私って一体……?」
「こんなところまで来てしまったのか」
項垂れる水琴の背にラディッツの声がかかる。
振り向きもしない水琴に構うことなく、ラディッツは舞台役者のように大げさな身振りで近付いてきた。
「大人しく町で待っていれば迎えに行ったというのに。挙式が待ち切れずここまで来てしまうとはそなたもせっかちな方だ」
「どこからそんな前向きな思考が出てくるのか小一時間問い詰めたいです」
水琴の声は冷ややかだ。
しかしそんなクールなそなたも素敵だ!とラディッツは一向にめげる様子は見えない。
「__とりあえず、黙っててもらえますか?」
生まれた風が水琴の髪を揺らす。
今日の威力はちょっとすごいぞ。