第98章 初めての共闘
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「おい、なんで隠れてんだよ」
「あのまま正面からぶつかってもしょうがないでしょ!どこかで領主の弱み握らないと」
バズーカから間一髪逃れ、屋敷内へ潜入した二人は目立たないよう廊下を移動していた。
大部分はまだ外にいるだろうが、屋敷内にも警備はいるので気が抜けない。
「めんどくせェな。ぶっ飛ばせば済むだろうが」
「それだけじゃ町の人が圧政に苦しむのは変わらないでしょ!法外な税を搾り取ったり怪しい賊抱えてるような連中なんだから、絶対何か裏があるはず。それを公にすればいくら貴族の出だからって無罪放免ってわけにはいかないでしょ」
足音が聞こえ咄嗟に一つの部屋に隠れる。廊下の外を足音が通り過ぎていくのを水琴は息を殺しじっと待った。
しばらくして音が消え、ほっと息を吐く。
「とにかく、資料室とか何かを見つけないと__」
キィ、と扉を開ける。
ばっちり外に立っていた見張りと目が合った。
「いたぞーー!!!」
「なんで?!なんであんなとこに一人だけ残ってんの?!」
「ぞろぞろと、一体どんだけいんだ」
あちこちから現れる警備をかわすように次々と角を曲がる。
既に自分がどこにいるのか水琴は分からなくなっていた。
「……行き止まり!」
出たのは吹き抜けの上だった。
下の方にホールと入口が見える。飛び降りることは訳ないが、あそこから外へ出ても待つのは先程の賊だけだろう。
ゆっくり風詠みする時間さえあれば、と唇を噛む水琴にずっと黙ってついてきていたエースがおい、と口を挟んだ。
「お前は資料を探せ」
「エースは……?」
「おれはこっちやる」
見つめる先には迫る警備の群れ。
「こそこそするのは性に合わねェ。片付けといてやるから、お前はさっさと行け」
「でも、いくらなんでも__!」
「いいから行け!」
水琴の方は一切見ず、迫る警備へと突っ込む。
悲鳴と共に何人か敵が空を舞った。
「……もう!」
死んだら承知しないからね!と悪態をつき水琴は手摺を乗り越え飛び降りる。
そして風になり、屋敷を駆けた。