第98章 初めての共闘
「ラディッツ!馬鹿領主!出てきやがれ!」
「エース、お願いだからもう少し穏便に……!」
堂々と門を蹴り壊し、敷地内へ真正面から侵入したエースは警備の者が駆け付けるのにも動じず大声で叫ぶ。
その横で水琴はもはや形ばかりの忠告をし、はらはらと様子を見守っていた。
あまりにも自信満々に突き進むものだから何か策があるのかと思ったが、まさかここまで堂々と不法侵入するとは思わなかった。
これでは海賊と名乗らなくても指名手配待ったなしである。約束の意味……!
「お前ら、一体何者だ!!」
「ここがファナン町領主、ダグラス様の邸宅と知っての狼藉か!」
「おー、領主ダグラスっていうのか。おれはそいつをぶっ飛ばしに来たんだ」
「んな……っ?!」
あまりのエースの物言いに警備の者達は愕然とする。
「随分と町の奴らから税を搾り取ってるらしいな。散々蓄えてんだろ?全部よこせ」
「ふ、ふざけたことを……」
「取り押さえろ!!」
一斉に武器を構えエースと水琴を取り囲む警備に、二人は慌てるでもなく並び立つ。
「さァて、いっちょやるか」
「あぁ、もう知らない」
腕まくりするエースと溜息を吐く水琴。
一瞬後、二人の姿がかき消えた。
水琴は文字通り、エースは瞬時に警備の懐へ入る。
「ぐはっ?!」
撃たれる前に強烈な蹴りを食らわし、エースは警備を地へ沈める。
背後に迫る一人を振り向きざまに拳で殴り倒し、その威力に慄き固まっていた横の一人は腕を掴み迫る敵へと勢いよく投げ飛ばした。
「何をしてる、撃て!」
「で、ですが味方に……!」
その後も警備の中をするすると通りながらエースは次々と敵を沈める。
「銃が無理なら剣を使え!」
一斉に抜かれた刀身が白く光る。
しかしそれらがエースを襲う前に突風が横から彼らを吹き飛ばした。
「ナイス!」
「ひやひやするからあんまり突っ込まないでよ、もう!」