第98章 初めての共闘
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ファナン町の外れ。領主宅。
煌びやかな装飾の施された、いわゆる成金豪邸の食堂で一人の男が昼食をとっていた。
ダンスホールかと見間違えるかのような広い空間の中央を占拠するこれまた豪華なテーブルで、ラディッツと同じエメラルドグリーンの髪を後ろになでつけたやや小太りな男は目の前に広げられた食べきれないほどの料理から分厚いステーキを選びナイフを入れる。
「父上!」
静かに上質な肉を味わっていたダグラスは騒がしい足音と共に入ってきたラディッツの声に食事の手を止めた。
「どうした我が息子。部下と共にクルージングしていたのではないのか」
「それが、港にふざけた奴が停泊していて……」
ラディッツは父親に港で出会ったエースと水琴について事細かにまくしたてる。
水琴の容姿について説明すれば、神経質そうなダグラスの目がきらりと光った。
「なんと!母上に瓜二つか。それはいい」
ウサロ、とダグラスは背後へと声を掛ける。
背後の壁にもたれるように佇んでいた男がゆっくりと前に出た。
その身を包む鍛え抜かれた筋肉と足音すら聞こえない無駄のない動きからはその男が歴戦の実力者であることが窺える。
「これから町へ降り、我が息子を傷つけた愚かな男を始末するように。そして娘をここへ」
「お安い御用だ」
主の呼びかけにようやく暇が潰せるとウサロは鋭い目を獰猛に光らせる。
食堂を出ていこうとしたウサロを遮るように、使用人の一人が食堂へと駆けこんできた。
「ダグラス様!ラディッツ様!」
「何事だ騒々しい」
「それが、妙な二人組が敷地内に侵入してきて……!」
「二人組……?」
ラディッツの脳裏に先程の二人が浮かぶ。
と、屋敷が大きく揺れた。