第98章 初めての共闘
「……強烈だった」
なんだかどっと疲れた。肩を落とす水琴はなんてことしてくれたんだ!と言う声に港へ視線を移した。
そこには遠巻きに騒ぎを見守っていた住人を背にわなわなと震える一人の男性の姿があった。
「あんたら!誰に何をしたのか分かってるのか?!」
「領主の息子だろ。それがどうした」
「領主?!」
さらりと出た聞き捨てならないエースからの言葉にぎょっとする。
「エース、領主に手出したの?!」
「だから、向こうが喧嘩売ってきたんだって!」
「同じことだ!ここの領主は息子を溺愛してる。必ず報復に来るぞ!」
なんてことだ、と項垂れる男性にエースと二人顔を見合わせる。
「あの、すみません。すぐに出て行くので……」
知らずとはいえ騒動の原因になってしまった負い目から水琴は申し訳なさそうにそう切り出す。
もう用事は済んでいるので今すぐ出ても問題はない。これ以上厄介事を増やす前にさっさといなくなった方が住人にとってもいいだろう。
そう思い発言したわけだが、男性はそんなことしてみろ、と低く呟き首を振った。
「奴らお前らを匿っているんじゃないかって町の奴らを襲い始めるに違いない」
「領主だろ。なんで町を襲うんだよ」
領主に対してのセリフとは到底思えない内容にさすがのエースも眉を寄せる。
エースの尤もな疑問に、男性はあいつらは領主の義務なんてこれっぽっちも感じちゃいないんだ、と吐き捨てた。